科学技術と社会、環境のつながりを探る
「科学技術と文化」は、大阪大学人間科学研究科社会学・人間学系の研究分野です。科学技術と文化は、同研究科の人類学研究室を構成する研究分野として、人類学分野と共同で教育・研究を行っています。
科学技術は、現代社会のあらゆる面に浸透し、我々の生活のあり方に深い影響を与えています。さらに、我々が用いる化石燃料をベースにしたテクノロジーは、気候変動などによって地球環境を作り替えてもいます。
「科学技術と文化」研究分野では、エスノグラフィによってこの複雑な関係を探っています。
このサイトでは、「科学技術と文化」研究グループの成果を紹介するとともに、大阪大学の授業「科学技術と文化」の教材を掲載していきます。
気候変動の時代に科学技術と社会を考える
今、人類は気候変動というかつてない危機に直面しています。国連によれば、気候変動がもたらす破局的な影響を避けるためには、2030年までに二酸化炭素の排出を45%削減し、2050年までにはその排出をゼロにする必要があります。これを達成するためには、社会、経済、そして我々の日常生活のあり方を根本的に変える必要があります。
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスのほとんどは、我々の経済活動と日常生活から排出されます。さらに経済成長中心の社会は、絶えず新たな資源(エネルギー、鉱物資源、土地)を求めて拡張し続けています。これによって、これまで地球の環境を安定化させていた森林や海洋が破壊され、気候はますます不安定化しつつあります。
そのため、気候変動を抑えるためには、社会と経済のあり方を考え直すだけでなく、テクノロジーと人間の間に新しい関係を築く必要があります。
大阪大学人間科学部の授業「科学技術と文化」では、科学技術論の視点をベースに、気候変動を抑制するために必要な社会、テクノロジー、科学の新たな関係を考えています。
科学技術をフィールドワークする
「科学技術と文化」では、とくに〈フィールドワーク 〉〈参加すること〉〈デジタルデータの分析〉の三つのアプローチを組み合わせることを重視しています。
研究室のメンバーは、科学技術を生み出す現場やそれを用いられる場面に実際に参加して調査を行なっています。フィールドワークを通して自ら参加することで、テクノロジーや科学が、我々の日常生活、それを取り巻く社会や経済とどのように結びついているのかを探索していきます。
研究室のメンバーは、これまで次のような研究を行ってきました。
- 持続可能な世界を目指すテクノ社会運動(科研費プロジェクト)
- 環境とインフラストラクチャーの相互作用についての比較研究(科研費プロジェクト)
- タイ・バンコク周辺の洪水防御システムと気候変動(科研費プロジェクト)
- デルタ地域の環境管理における不確実性と気候変動(学振・欧州との共同研究プロジェクト)
- お掃除ロボットへの愛着とソーシャルメディア(卒論プロジェクト)
- ハンセン氏病の科学と医療から見た人間と細菌の関係史(修士論文)
- iPS細胞を用いた再生医療プロジェクトにおけるケアと希望(博士論文)
- 認知発達ロボット工学とSF(博士論文)
- イノベーションとエコロジカルな想像力(博士論文)
このブログでは、これらの研究成果と「科学技術と文化」の授業の教材を掲載していきます。
「科学技術と文化」の活動の様子は、共同で教育を行なっている人類学研究室のウェブサイトやFacebookページからも見ることができます。